L-M BRIC News イラストL-M 組紐技法入門シリーズ                     2002 ©改訂 2006  
L-M Braiding Research & Information Center / Masako Kinoshita
5 Winthrop Place, Ithaca, NY 14850 U. S. A.
Phone & Fax 607-257-0886 e-mail mkinoshi@twcny.rr.com

L-M BRIC ニュース

イラスト・ループ指操作組紐技法入門シリーズ

基礎事項・用語・図解 解説・組み方基礎

本L-M 組紐技法紹介シリーズでは、L-M BRIC ニュース各号に掲載する指操作手順のみを扱う。手操作技法は入門シリーズクテ打を、 技法の詳細は文献を参照注1

組紐に用いる 素材
組紐には洋の東西を問わず 絹糸が使われることが多い が、作成中のストレスに耐えら れる素材であれば、材を問わない。種々の素材を試すことでそれぞれに異なる効果があることを知り、自分が求める結果が得られる素材を選ぶことである。また 素材の効果は絹、毛、木綿等の種類によるだけではなく、1本の糸にかかる撚りの向き、度合い、何本撚りであるか、さらに組糸が数本の糸からなるか、多数本 からなるか、など も関係する。組紐はまず第一に如何に組目が整っているかで評価されるが、組目が隠れて色調のみが表にでる様な素材、例えばシュニー ル糸や裂き布などを使った効果を狙うこともできる。
練習用には、太めの毛糸1 本取り、3番または6本取 りパール刺繍糸を2本取りにし たものなどが適当であろう。滑らかで強い糸を適当な太さになるように数本取りにして用いればよい。けば立ちやすい糸や、シボの多い糸は不向きである。

ループの準備
ループ数5の手順では、組糸10本を使っ た組紐ができる。つまり 10本の糸束で所 要の太さの組紐が作れるように、ループに使う糸の太さをきめる。
素材の糸を手の回りに適当回数巻いてから 抜き取り、その束を出来上 がりの紐の堅さ くらいになるまで捻る。その時の糸束の太さが(巻き回数×2)本で組んだ紐のおおよその太さになる。目的の太さになったら、その時の巻き回数 を確認する。

1本の ループに用いる糸本数=(巻 き数×2)÷(ループ数×2) =巻き数÷ループ数 組 頭を支柱に固定し、ルー プ端を1本づつ規定にした がって指に掛ける。

ループの作り方図1-1  ひと繋がりの糸でループを作る:素材の糸をループの本数に相当する回数綛に巻き、1端をまとめてしっかりと一重結びにして組頭とする。綛は1周が目的の 紐丈の約4倍の長さになるように巻く。 または、紐丈の約4倍の長さにループ数だけ糸を切って、切った両端をまとめて結ぶ。
図1 -2 ルー プ丈に切った組糸の端 を2本づつ結んでつなぎループ に作る:目的の紐丈の約2倍の長さにループ数×2本切る。一端を束ねて結んで支柱に固定し、他端を2本づつ結んでループに作る。2色、或は2 種類の糸から なるループが作れる。
図1-3  ループ2本を絡めて2色 ループを作る:アンデス地方で使 われる方法。作業中にループがほどけてしまわない。注2


図2 指操作技法 (Finger-held L-M)と手操作技法(Hand-held L-M)

f-f & h-h
現在私たちが 知っているL-M技法は、世 界各地の民間に残る現行技法の 報告と、昔の記録から復元された技法に基いている。大別してループを1本づつ左右の手の指にかけてもつ指操作法(F-H L-M)と、ループを両方の手に分けて並べかけてもつ手操作法(H-H L-M)がある。大多数はF-H L-Mで、H-H L-M はアラビア半島のオマン首長国に現存するものと日本の記録に残るものが知られているのみである。注3

ループを持つ 時の掌の向きによって異なるF-H L-M組成技法 3法 (図3)

第1法 又は A型 組口 法:「掌向い合 せ(または上向き)、人さ し指で操作」注4) 

第2法 又は V型 組口 法:「掌上向き (または向い合せ)、内側 の指(薬指か小指)で操作」(注5< /font>

第3 法 又は 掌下向き 法: 「掌下向 き、内側の指(人さし指)で 操作」( 組口はV型)

操作指:綾を取り移動ループを取る指 第1法、第3法では人さし 指、第2法では小指か薬指
移動ループ:綾の中を通り操作指に移されて組みの組織を組成する 第1法では薬指か小指、第2法では中指か人さし指に掛かるループ

下の3図に見られるように3法のいずれにおいても、操作指と移動ループの間にあるループの綾を通して 移動ループが操作 指に移動して組織が出来る機構は同じである。 

f-h 3法

  「掌の向き」は一 応の指標であって、 実際の作業では、掌の向きは上向きから向かい合わせの間を自由に行き来する。

 第2、3法は、第 1法の逆操作である。つま り第1法で組んだ組紐は、第 2法か第3法でほどくことができる。

 採録または見聞報 告では、第1法は北アフリ カ、中南米、及びヨーロッパ に見られる。またヨーロッパ各地で12世紀から17世紀にわたり使われていたのはこの方法である。注6

  第2法はインド、 日本、ロシア、タイで現行 されている。紀元前1世紀頃に中国南部で用いられていた方法も第2法と推定される。注7< br>

  第3法はスカンジ ナビア地域(デンマーク領 ファロエ諸島、ラップランド)か ら報告されている。

  本シリーズでは、 トピックに出てくる方法の みついて解説し、必要がない 限りそれに対応する他法をその度に加えることをしない。特に第3法はトピックに上ることは少ないので、関心がある向きには、Ann Dyer 著PURSE STRINGS UNRAVELLED を 参照することをお勧めする。
 

イラスト解説 に用いられる用語

initial allotment

図4-1 
左手の指を人さし指から順に小指に向けてLa, Lb, Lc, Ld, 右手も同様に人さし指からRa, Rb, Rc, Rdとする。その指に掛けたループにはLとRの大文字の替わりに小文字を使う。




図4-2及び 4-3
 「ループ の足」、ループやループの足を 指定する場合に用いる用語の図解
ループを指に掛けて構えた時のループの位置関係で表示。
上と下
  
 










中側、外側
















ループ 初期配置  図4-4
大多数の指操作法組紐に用 いるループ数は採録記録で は5の場合が多いが7、まれには9の場合も ある。原理的には偶数でもよく、正倉院の組紐には6、8、10のもの、イギリス15世紀の記録にはループ数8のものがある。

initial allotment
図5-1 綾の取り方3種(通す、逆取り、飛ぶ) 
操作指をループの中に矢 印の方向に差し込む、或は飛び越す。綾は両手とも同じに取る。綾の取り方
図5-2  移動ループの取 り方2種(開、閉)
操作 指で、移動ループを図示のよう に取って、矢印の方向に引き抜く注8移動ループの取り方
 

指操作組み方概 要:
1.まず、操作指(右)でそれと移動ルー プ(左)の間 にあるループで1本づ つ綾を取る(例えば 「通す・通す」)。
2.その操作指(右)で移動ループ(左) を取る(例えば「開」)。
3.操作指を綾の中を通して引き抜く。移 動ループが(左手から右手の) 操作指に移動す る。
4.(左手の)ループを差し替える。
(左手)操作 指が空指になり、次回の操作の準備が整う。

次回はループが逆向きに(右手から左手 に)移 動する。1-4の鏡像の操作を行う。
以上を繰り返 えす。

  ループ 移動には、ループの取り 方(「開」又は「閉」)の組み合わせ方が3種ある:

1.  左右とも 「開」
2. 左右とも 「閉」

3. 左 「開」、右「閉」又はその逆

3 種類の取り方の組み合 わせで異なる3種類の組紐ができる。
つまり同一の綾で、3種類 の紐が作れるのである。
 

正規組織組紐
綾を全て同じ取り方で取れば、正規組織組 紐が組成される。「普通 に」見られる組紐 の殆ど全て正規組織組紐である。但しループ指操作法で組める正規組織組紐には以上の基本的組紐以外にも多種の組み方がある。

不正規組織組 紐
綾の取り方には上記3種類(通す、飛ぶ、 逆取り)があるが、この 3種類のいづれかを一回の 開口に混ぜて取 れば不正規組織組紐になる。但し採録されているものの大多数は、UO1(開)、UO2(閉)と呼んでいる2種である。不正規組織の綾は指操作法では無理な く取れるが、他の技法でこの様な紐を組むのは非常に面倒である。従っ てこのような組紐が発想されるれるのは指操作法に限られているという意味で、不正規組織組紐は指操作技法の「目印」になる。

現 在知られる限りでは、古記録でも採録 で も不正規組織組紐は。ロシアの1件を除いては第1法に限られている。 第2 法でもこれ 等3種混合の綾を取ってつ くる組紐は当然なこととして考 えられるが、現今採録技法から知られる手順には、ロシアの採録報告1件を除いては、同種の綾を取る正規組織のもののみである。

操作1  操作指(右)を使っ て、操作指と移動ループ(左)の 間にあるループの綾を取る(「通す」、「逆取り」、「飛ぶ」)
操作指で移動ループの上糸を掬い取る (「開」) 或は上糸を上から 引っかけて取る (「閉」)。
移動ループが操作指に移る。

「開」移動すれば操 作指の上糸は移動後にも上 (外側)糸である。
「閉」移動すれば操作指の上糸は移動後に 下(内側)糸になる。

操作2 ルー プを差し替える。それには、移動ループが取られ て空いた指を、すぐ隣のループに差し込み、代わりにそのループがかかっていた指を抜き取る。今抜き取った指を次の隣のループに差し込みそのループがかかっ ていた指を抜き取る。操作指が空き指になるまで順に繰り返す。ループ数が5ならば、2回目に抜き取った指が次の操作指である。

操作3  操作指(左)を使っ て、操作1と同様に操作指と移動 ループ間にあるループの綾を取る。

操作4  操作2と同様にループ を差し替えて次回操作指を空き 指にする。

操作5  両腕を広げて組糸束を 強く引く、或は組み口を足で押 すなどして、組み目を締める。助手がいれば、組み口を打箆で叩いてもらう。

シリーズ中の個々の 手順解説には、操作3は、 操作が単に操作1の左右を入れ 替えたものでない場合にのみを記載する。
操作2、4、及び5は記載を省略する。

上記を方法別に対照 させて書けば次の様にな る。
 

第1法 第2 法
操 作指
人 さし指(外側指)
小指(内側 指
 ループ初 期配置
左 1, 2, 3 右 2, 3
左 2, 3, 4 右 2, 3
操 作1
左3 が右1に移動
左2 が右4に移動
操 作2
左2, 1を左3, 2に差し替える 
左 3, 4を左2, 3に差し替える
操 作3
右3 が左1に移動
右2 が左4に移動
操 作4
右2, 1を右3, 2に差し替える 
右 3, 4を右2, 3に差し替える
操 作5
組 口を打って組織を締 める

 

径路図
手順図解の上にその手順で組成される組紐 を径路図により表示してあ る。
径路図はシュパイザーが提唱する組紐構造 のグラフィック表示法であ る(注1)。径 路図を通して糸の動きとその結果組み立てられる組紐の構造との関係を直感的にとらえることができる。文字で表す代わりに、径路図によって組紐に組込まれる ループの動きを理解することもできる。径路図に慣れていない人は、例えば、何本かの平組紐がどのように組み合されて1本の複合組紐になっているかを図形に したものとして納得してもらえばよい。その場合に複合の基本因子である2畝、4畝、或は6畝などの平組紐は、2目(8の字)、3目、6目などの径路で表示 される。円、又は楕円等の1目閉曲線は螺旋体を表示する。


1 1 1 1 1 1