L-M BRIC NEWS No. 7 Illustrated Instruction 日本語版  03-31-2004 ©
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イラスト L-M 組紐技法入門シリーズ:第7回


片表亀甲組の組み方について



亀甲組紐例日本に現存する中世期以来の高度に発達した組紐遺品は、現在無形文化財とされている組み台を使う組紐技法で組成されたものと考 えられてきた。しかしこれは クテ打で組めば極めて合理的に組める。

鎧の繰締の緒、耳糸などに鎌倉時代以降よく使われている片表亀甲組紐も、クテ打で組まれたものとすれば、台組み の構造としては納得しにくい組織の詳細にも 説明がつく。
亀甲柄の組紐遺品には、亀甲柄が紐 の2面にある両面亀甲組紐と片面のみにある片表亀甲組紐がある。(写真1)前者は後者2本の裏面を腹合せにして繋いだ構 造になっている。即ち片表亀甲組が2層構造であるのに対して両面亀甲組は4層構造である。

写真1 両面亀甲組と片表亀甲組例 試作資料 紀州速玉大社蔵国宝両面亀甲組紐、片表亀甲組紐を2本同時組(
木 下雅子作)

片表亀甲組紐の3種の組み方
第1法:組み手4人で「四角2本同時打」(AACC・OO)を横に連結する。片表亀甲組紐が2本同時にできる。(図 1上中)
第2法:組み手2人で「四角2本同時打」を連結すれば、御嶽組(2層構造2連角組)が2本上下に重なって組め る。ただし右側の組手は四角2本打のバリエー ション(AGCD・OO)を用いる。これで右側の上下2本の2連角組を一方の耳端で繋ながり、4本の角組がコの字なりに折れ曲がって繋がった紐になる。出 来上がった紐を拡げると片表亀甲(2層構造4連角組)になる。内側の折れ目が溝になって残るのが特徴である(図1上右)
第3法:4人の組み手がそれぞれ角組を組みながら横に連結して片表亀甲(2層構造4連角組)を組む(図 1下右)。


亀甲3法

図1 片表亀甲 組の組み方3法略解

右端での「外廻り」移動では「G」、「中通し」移動では「D」を使う。「G」は手操作法基 本事項解説の最後に説明した追加基本操作で、まず始めにループを捻ってからループを移動する。

両面亀甲組紐遺品には写真1にみられるように紐の表裏が色違いの亀甲柄になっており、周期的に表裏の色柄が反転 するという構想になっているものが多い。
このような両面亀甲組紐を組むには2色ループを用いて第1法と同じ組み方を使って表裏それぞれの面で同色亀甲柄 が繰り返す部分を組む。ここでは2層構造の 紐2本に離れているが、色柄を反転する部分では四角2本打を横繋ぎに組むことになるので離れている2本が繋がって1本の4層構造の紐になる。
このデザイン構想は平安期以来の4層構造組紐に見られるもので、鎌倉期に始まったと考えられるが同じ構想に基づ く両面亀甲組紐が、表裏同色両面亀甲や片表 組紐に先行すると考えられる根拠である。単純なものから複雑なものに展開していく常識から外れるが、以上の発展径路をたどれば色柄反転のない両面亀甲組や 片表亀甲組は、反転する色柄構想から展開したものと考えるのが妥当である。

第2法は片表亀甲組の組み方の1方法として、Speiser が 1986 年に木下との私信中に提案したもので、中尊寺蔵藤原秀衡棺中の組紐に代表される4層構造4連角組のバリエーションである。この方法で組成した紐にはコの字 も内側の折れ目にそって溝跡ができる。当座は遺品例がなく、面白い考え方ではあるが少し突飛すぎるのではないかと考えたが、その直後にこの方法のバリエー ションを用いた遺品例があることが解った。その頃観測した片表亀甲遺品中には該当例は見られなかった。2002年に深い溝が中心軸を通る鎌倉時代の遺品例 を小村真理が 2002 年に見出し、この組み方が実際に亀甲組にも用いられていたことが証明されたのである。鎌倉時代にクテ打が大きく飛躍したことがわかる。

2人組み組紐例

写真2 試作試料 上 奈良西大寺蔵重文大神宮御正体厨子羯磨文様錦戸張の釣紐、下 国宝知恩院蔵伝教大師立像内納入の組 紐 (木下雅子作)

第1法と第2法で組成した紐は上下両耳の畝の越し数が同数になる。これは4層構造組成法の特徴で、第3法で組んだものでは上下面の最外側の畝に1越の相違 があるという特徴に対比できる。

第1法では4人で片表亀甲組が2本同時に組めるのに対して、第3法では4人で1本しか組めないが、第1法は年期を入れた熟練工のみに許された秘伝技法で あったと考えられるのに対して、第3法は並の組み手で組めるから経済的にも妥当な方法なのである。